2009-01

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酷い話。


酷い話さ。


そこは一面の花畑で、僕はそこにただ呆然と突っ立っている。
いつの間にか居た。
気付いたらそこに居て、どこからどうやって来たのか全く解らない。
今が何時で、何月なのかも解らなかった。
ここに来るまで、どこで何をしていたのか...僕の記憶はすっからかんになっていた。
何を考えたら良いのかも解らず、ただ立っているといつの間にか隣に誰か居た。

自然と、右手が彼女の頬に触れる。
すると目の前の人は、右手を振りかざしてそのまま僕の左頬へと振り下ろした。
パチン、と小気味よい音を瞬間で想像したが、実際は頬骨から頭蓋まで響くゴツっという音だった。
よろけて少し彼女との間が広がった。
何故か僕はその広がった距離を一時でも保っていたくなくて、すぐに元の立ち位置に復帰した。
「いやな人、私のことなんて全然思い出せてないくせに」
言動と表情が全く合ってない人だな、と思った。
とても穏やかに、僕をゆったりと見つめる。
どうしても彼女に触れたいらしい僕は、また右手を彼女へ伸ばす。
今度はパチンと小気味よい音がして、彼女の右手が僕の右手を払った。
「駄目よ。思い出してから出直して来なさい」
その言葉ひとつで、もうこれ以上僕は彼女に触れることが叶わないのだ。
「さあ、行って頂戴」
ああ、あと何年後にまたここへ来られるだろう。
「まだよ、まだあなたの出番は終わってないの」
もう何度ここへ来て、彼女のこの言葉を聞いたのだろう。
「だからここへ来るまでに私のことを忘れてしまうのよ」
まだなのか、そうか、ならもう一度僕は行かなきゃならない。
「きっとまだ、ちゃんと終わってないのよ」
そうだったのかなあ、そうだったかなあ。
「何度も追い返す方の身にもなって頂戴」
ごめんね、ごめん。ほんとうに。
「今度また思い出せてなかったら承知しないわよ」
うん、そっか、また待っててくれるのか。そっか。
「さあ、もう一度」
うん。




ここはどこだろう。
ああ、そうだ、ここは。
身を起こすとそこは草原。
だだっ広い、花のひとつもない、見渡す限りの緑色。
僕は今まで何をしていたんだろう。
誰かがそばに居た気がするのに。
とても会いたい人なんだ。
会いたい人に会えたんだ。
それなのに、どうしてこんなに情けない気分なんだろう。
思い出さなくちゃ、とそれだけ思う。


きっと酷い話なんだろうな。



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