2009-11

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冬の一夜

これでいくつめの通りを横切って、いくつめの町に入るのかなんて
そんな数字になんて意味は無いというのに
「年はいくつ?どこから来たの?」
大人という生き物は、僕と目を合わすとそんなことばかり聞くのだ。
「きっとあなたよりも沢山。どこから旅を始めたかなんて覚えちゃいないさ」
そう答えるとため息を吐いて、決まってこう言うんだ。
「ご両親は?」
だから僕は大人と目を合わすのが嫌なのだ。

北の大きな街で、ある女の人に出会った。
彼女は古ぼけた石造りの建物の上の窓から僕を見付けて
「こんな寒い夜に一体どこを目指しているの?」
そう声をかけた。
「目的地なんかない。ただ後ろじゃない方向へ歩いているだけさ」
見上げてそう答えたら
「そろそろ休憩したら?また雪が降って来た。凍えてしまわない内にこちらへ上がっておいで」

部屋の中は温かだった。
ロウソクの燃える匂いと、スープの匂い。
「旅の人なのね。お話を聞かせてくれると嬉しいわ」
南の街の図書館で見た「きまぐれな本」や、大きな森で見付けた夜だけ実をつける木、
いつもの様に旅人しか知らない話を選んだ。
「まるで絵本の中のようなお話ね。わたしも見てみたい」
なら旅に出れば良い...なんて、そんなことは言わなかった。
旅をする人間は街には住まない。
「わたし、最初にあなたを見付けた時わたしよりずっと若い人だと思ったの」
「...今は?」
「こうして近くで見て、お話ししていたらわからなくなってしまったわ」
女の人は僕を正面からじっと見つめた。
「ずっとずっと私より長い年を生きているようにも見えるし、そう思ったと同時にとても頼りなくも見えるの」


明け方、いつも日が昇る前に僕は歩き始める。
そっと腕の中から抜け出して、小さな荷物を背負って戸を開けると小声で礼を言った。
眠っている振りをしていた女の人が小さな声で
「もう会うことは無いでしょうね。あなたがこの街へ次にやってくるのは、きっとわたしの知らないずっと先。」
僕はひとつ頷いて、扉を閉めた。


数をかぞえないのは、本当に意味が無いからだ。
例え数えていたとして、それを誰かに言ったとしても信じる人など居ない。
増えも減りもしない僕には、それはいっそ無駄と言える。
進む方角を決めることも、夜眠ることも、一時の暇つぶしにしかならない。
もう一度出会う約束をしたとしても、とっくに感覚の狂ってしまった僕には守りようが無い。


しっかりと把握していることと言ったら、
とりあえず今も昔もこの世界にしか足跡を残していないということ。
ただその一つだけ。

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