2011-02

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いつかのだれかからのたより


小さな雨粒が頬にかかって見上げる。
「冬の雲だ」
曖昧な輪郭をそのままに、ゆっくりと空を移動する。
初めて見るはずのものに既視感を覚える、つまりデジャヴというやつが頻繁に起こる僕だが
これはなんだか珍しく見覚えが無かった。
きっと今までに見ているはずなのに。

「世界は2つあって、それぞれの透明度が50パーセントくらいで重なっているのだと思う」
と思う。
「ふとした瞬間に行き来しているのだと思う」
と思う。
「既視感を覚える時、きっと世界を2つ同時に見てしまっているのだと思う」
と思う。
最初は頭がどうかしているのだと思った。
医者に行けばきっと、良くて自律神経がおかしい、悪くて脳に腫瘍があるとか言われるんだと、
そんなことを思っていたけれど、
世界が2つあると考えてしまえば、すとんと腑に落ちるのだ。
痛い人を見る目で、友人が僕との距離を物理的に少し置いた。
一歩下がって笑う男。
「なんていうか、あたまだいじょうぶ?」
冗談として片付けてくれる彼はとても好ましい。
「2つの世界はほとんど一緒で、きっとちょっとだけ違うからデジャヴが起こるんだ」
そう思っていた。

『ここで待つ』
迷い込んだ路地の壁にそう書いてあった。
息をのんで凝視する。
何か知っているような気がして、うつむいて考え込む。
顎に手をやるのは僕の癖だ。
顔を上げてもう一度見ると、
まるで知らない言語で何かがラッカーで雑に書かれているのがあるだけだった。
他にも何か書いてあるだろうかと見回すと右の壁、
『ゆっくり待ってる』
左の壁、
『ゆっくり来い』
もう一度しっかりと読み取ろうとして見ると
やっぱり知らない言語で何かが書いてあるだけだった。
けれど、きっとそう書いてあるのだろう。
誰かが、誰かを待っているのだろう。
それはきっと僕だが、
誰が、何が待っているのかわからない今の僕ではないのだろう。

「ファンタジー本の読みすぎか、映画の観すぎだと思います」
なぜか敬語で笑う男。
「まあそうだろうなあ。普通に考えたらなあ。」
と思う僕。
ふと気付いて、彼をもう一度じっくりと見る。
そこにあるのは見慣れた、痛い人を見る目。
しかし、
ああ、僕は、
彼が誰だか知らない。
僕は彼を初めて見るわけではないのに、彼と会ったことがない。

そうだなあ、
きっとずっと先で会う人なのだろう。


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