2017-10

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APPLE

「これはリンゴ」
「りんご」
赤い手の平大のリンゴを服の裾で拭いて一口かじる。
がしっと良い音がした。
じっと何の表情も浮かべずにこちらを見上げている子供にそのまま手渡してやる。
「食ってみろ」
両手で受け取って齧る様を見下ろす。
かしっと小さく音がした。
「あまい...」
「美味いか?」
「うまい?」
「好きか?」
「...すき」
「じゃあ”美味い”だ」
「うまい」
「なんだ、坊主はリンゴも食ったことないのか?」
店先での二人連れのやりとりを見守っていた店主が不思議そうな顔をして口をはさんだ。
「まあ、ちょっと特殊な環境で生まれ育ったんでな。まだ知らないことの方が多いんだ。」
大人の方が曖昧に答える。
店主は先ほどのものよりも小振りで黄緑色のリンゴを子供の方へ差し出した。
「これも食ってみな」
子供は大人の方を見上げた。
大人が小さく頷くのを見て黄緑色のリンゴを受け取って齧る。
「...すっぱい.........あまい」
「甘いと酸っぱいで”甘酸っぱい”だ」
「あまずっぱい」
「うまいか?」
「...............うまい」
大分考えてからのその言葉を聞いて店主が笑う。
「ははは、赤くて甘い方が好みらしいな」
それから子供の方に視線を合わせながら
「果物ってのはな、大体が生まれたばかりの頃はこんな色をしてるんだ。」
「それからだんだんこんな赤色や、黄色や...おいしそうな色になって、あまくなるんだ」
子供はじっと聞いている。
「もちろん違うのもある。その緑色のリンゴは”青リンゴ”って言ってそれ以上色が変わらないんだ。それ以上甘くもならない」
子供は不思議そうな顔で少しだけ首を傾げる。
「これ食ってみな」
店主が黄色い果実を少し切って手渡す。
子供はそれを口に入れた瞬間に身を竦めた。
大人はそれを苦笑いで見ている。
「それが”酸っぱい”だ」
「......すっ...ぱ...」
店主が大笑いする。
「それは”レモン”。果物は甘いのが多いが酸っぱいのもちょっと苦いのもあるんだ」
大人が手に持っていた赤いリンゴを手渡してやった。
子供はそれをまた小さく齧る。
「あまい」
「酸っぱいのの後に食うとなおさら甘く感じるだろう」
「レモンはすっぱい...」
「レモンは酸っぱい果物の代表だからな」
店主が相槌を打つ。
「青りんごはあまずっぱい」
「そう」
大人が相槌を打つ。
「これは...りんご...赤りんご...?」
手元のリンゴをじっと観察しながら呟く子供を見て、店主と大人は何だか困った顔をして笑った。



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