2017-06

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Perfect ordinary


ヘソの様な場所だった。

地球のヘソ、というとあのオーストラリアの大きな岩を思い浮かべるけれど
それは、おかしくないか?
“ヘソ”ってのは凹んでいるんじゃないのか?
世界では“出ベソ”人口の方が多いのか?
まあ良い。
僕がうっかり転がり込んだ、あの小さな世界はまさしく僕の言う“ヘソ”の様な場所だったんだ。
その地に立って見上げてみると、空は丸く切り取られていて狭い。
360度くるり回って見えるものと言ったら象牙色をした、いかにも固そうな岩壁。
な?これを“ヘソ”と表現せずに、どう表すっていうんだ。
僕からしたら世界のヘソはあそこだ。
ところで、そこにあったのは岩壁だけじゃなかった。
ぐるりと岩壁に沿って、川が流れていた。
いじわるだよな。壁をよじ登るべく岩肌に手をかけることもままならないんだ。
なんたってその川は深い。
水はきれいなエメラルドグリーンで透明度は高いはずなのに、底が見えない。
飛び越えたら良い、だって?
底なしの様な川を跳んで壁に向かって突撃をかまして、
ついでにうまく壁に貼り付いてそのままよじ登れ、とでも言うのか?
僕はスーパーマンじゃない。

その川にはやたらと大きな魚が居た。
昔水族館で見た古代魚そのものだ。
緑色の水底から、ぬうっと現れては、どんよりと漂っている。
あの水かきの力、半端ではないだろう。
何故なら、このヘソでの川の起源は滝だからだ。
よじ登るには一苦労しそうな程高い岩壁の上から落ちる滝。
そして川幅はあまり広いとは言えない。
つまり見かけによらず意外と流れは速いのだ。
つまり先程君が言ったように川を飛び越えようとして失敗すると、
勢い良く流されて、あるのかどうかすら解らない川底へ引っ張り込まれるという訳だ。
僕は勇者じゃないから、そんな度胸は無い。


さて、僕がいかにしてここから脱出したか。
簡単に言うと、川に流されたんだ。

川が流れていると言うことはだ、このヘソの向こうへと川が続いているということ。
しかし、岩壁を見回しても岩じゃないところはただひとつ、滝だけ。
けれど川は流れている。
滝から流れた水は二手に分かれてまた一つになる。
なぜって、このヘソは円形だからだ。
流れはどちらも同じ方角へ向かっていた。
岩壁沿いにぐるぐる回っている訳では無い。
となると、川の合流地点の壁に穴でも空いていないと辻褄が合わないのだ。
もちろん確かめてみたが、川底が深過ぎて解らない。
生えていた草を流してみたら、ビンゴ。
勢い良く下へ引きずり込まれていった。
合流地点の下方、視認出来ない程深くに穴があるのだ。

僕はスーパーマンでも勇者でもない。
急流に耐えて泳ぎきる体力があるとは思えないし、確実に息も続かない。
一か八かに賭けてみるような勇気もない。

どうやって僕が壁を越えたのか。

腹を空かせた僕は、小魚でも獲ろうと思って簡易の釣り竿を作って糸を垂らした。
かかったのは、あの古代魚。
手を放せばあんな恐い思いはせずに済んだのだが、
引っ張られて思わず握りしめてしまった。
軽々と川へ引きずり込まれて、意識が途絶えた。
目が覚めると川岸に居た。
見上げた空は広かった。


ところで
なぜあんなところへ転がり込んでしまったのか、僕にもわからないのだ。
実はあそこへ落ちる前、僕は家の近所を散歩していただけなのだ。
ぼんやりと歩いていて、つまずいて、あそこに落ちていた。
後で地図で確認しても、そんな“ヘソ”の様な地形はあの辺りには無かった。
というか、おかしいだろう。
住宅街から突如、あんな大自然溢るる地へ転がり込むなんて。

ひょっとしたら僕は秘境を発見してしまったのかもしれないが
僕は冒険家じゃない。
だから別に人類未踏の地に足を踏み入れたからと言って、血湧き肉躍らない。

自宅で茶をいれて、ほっと一息ついている瞬間をこよなく愛す凡人なもので。
不思議なことなど、この世界にはありふれていると知っている。
ただそれだけの凡人なもので。

こんな話は誰も信じちゃくれないことも解っている。
夢を見たのだ、と言われるのがオチだ。
だから誰にも言わず、ここに書いているのさ。



マニュアル ランニン «  | BLOG TOP |  » loser's rest

プロフィール

アラスカ

Author:アラスカ

最近の記事

月別アーカイブ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。