2017-06

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エンドレス


「なんだこれ」


地面に水の跡。
正確に言うなら、水で何か書いた跡で
よく見たら僕のフルネームだった。
「なんだこれ」
僕はそれを踏んで通りすぎた。
踏んでから、小便で書いたのだったら嫌だな、と思った。



「なんなんだ」
また書いてあった。
さっきの場所から10mくらい先。
今度は避けて通った。



「まただ」
また書いてあった。
またさっきのから10m先。


「…」
また10mの地点。
今度は他にも書いてある。
『わたしはおまえをしっている』
「誰だおまえ」


10m先。
『3』







10m先。
『2』







10m先。
『1』









10m先。
マンホールがあった。
『あける↓』
「あけない」
「あけろよ」
いきなり耳元で声がした。
すごくびっくりした。
耳元で声がしたと思ったのに振り返ってもその姿は見えない…

と思ったら足元に小さな女の子。
「あけろよ」
「いや、だれ?」
「いいからはやく」
「いや、だからだれよ?」
「あけろ」
じれったそうに女の子が言う。
黒い艶やかな髪が揺れる。
僕はマンホールの蓋をあけた。
重かった。
「はいれ」
「やだよ」
「いいから」
最終的には突き落とされた。


ざざざっと小石の山のようなところへ落ちた。
マンホールの中ってこんなんなの?
明るいところから暗いところへ入ったからよく見えない。
「好きなだけ持っていけ」
何を?と思って首を傾げていたらポケットに手を突っ込まれた。
「これはお礼なのだ」
何の?
ポケットに手を入れたら石が何個か入っていた。
「わたしはむかしおまえに助けられたから、お礼なのだ」
「むかしって君が赤ちゃんのころ?」
「そうだ」
「覚えてないよ」
「わたしは覚えている」
「赤ちゃんだったのに?あ、お母さんにきいたとか?」
「わたしはちゃんと覚えている」
「僕は覚えてないよ」
「わたしは石を投げられていて」
「赤ちゃんにそんなことするやついるのか」
「おまえが怪我を手当てしてくれた」
「まったく覚えてないぞ。人違いじゃないか?」
「わたしたちはおまえらよりよく覚えているんだ」
「えー?」
「いいから好きなだけ持っていけ」
つってもただの石じゃないか。
何かの遊びなんだろうか。
少し付き合えば気が済むかな。
「うーん、君がそれで気が済むなら、さっき君がここに入れてくれたのをいただくよ」
「…欲がないな」
「じゃああとひとつ」
足元からひとつ拾いあげてポケットに入れた。
「じゃあもう上がろうか」
顔を上げたら誰もいなかった。
「…あれ?」
先に上がったかな、と思って昇ると、誰も居なかった。
帰ったのかな。

マンホールの蓋を戻して、さっきの道を戻ってみた。
地面の字はもう乾いて消えていた。
ポケットに手を突っ込んで中身をひっくり反したら地面にバラバラと色とりどりに光る石が落ちた。
それと黒い小さい羽がふわり。
「あ」

そういや、むかしここらで…。

それにしてもこの石は…
「おもちゃかな?それにしちゃ質感が…」


あまり深く考えないことにした。


「やっぱ光ものが好きなのか」
カラスが頭上でのんびり鳴いて飛んでった。



石は綺麗だからもらっておこう。
せっかくだから宝飾やってる友達に指輪にでもアレンジメントしてもらおう。
身に付けたらご利益がありそう。
このあたりではカラスは神様の使いだと言う伝承がある。
それにしてもあのやり口はいただけない。
あれじゃまるっきり怪談か何かだ。
しかし…
「いじめてた奴はどんな目に…」

やっぱり深く考えないことにした。







「おまえ…」
「なんだ」
「あのやり方は人間が怖がるだろ」
「わかりやすくしたのだ」
「わかりやすく怪談じみてるぞ」
「そうなのか?」
「普通は怖い。あいつよく逃げなかったな」
「あいつは勇敢なんだ。優しくて勇敢だ」
「優しいのはまあ、わかるが…」
「なんだ」
「変な人間だな」
「まあそうだな」




「へっくし」




「くしゃみしてるぞ。風邪かな」
「たいへんだ。薬草の汁を…」
「ぶっかけるのはやめてやれ」
「だめか?」
「やめてやれ」





葉っぱがひらひら何枚か降ってきた。
緑の葉だし、落ち葉じゃない。
よく見たら木の葉でもない。
「なんだ?」
なんとなく持って帰ったら婆ちゃんが
「あら、薬草じゃないか。どうしたの」
なんか僕は笑ってしまった。
「あはは」
婆ちゃんは変な顔をしてた。



「なんか笑ってるな」
「元気になったのかな」
「…そうだな。違うと思うけどな」
「なにがだ」
「なんでもない」




カラスが2羽、家の前の木にとまってる。
林檎を剥いて木の下に置いた。
「薬草のお礼だよ」
カラスは尾っぽをゆらゆらこちらを見下ろした。





「たいへんだ!りんごだ」
「うまそうだな」
「礼をせねば!」
「…」



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