2017-05

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夜が来る。

僕が歩くと夜が来る。

正確に言うと、僕が歩いた後ろは夜なのだ。
振り返ると夜。
前方は日が差し、後方は星が輝く。
この国ではそうなのだ。
不思議な事にこの国だけだが。
科学者曰く、僕はそういう“現象”らしいのだ。
生まれた時のことは覚えていない。
当たり前かな?
ところがそうでも無いんだ。
誰一人、僕が生まれたことを知らなかったんだ。
勝手に生まれて、勝手に育った。
気づいた時にはこの通り、歩いていて夜を連れていた。
大問題さ。
なんせ僕がひとつ所に居続けるとその後ろはずっと夜なんだ。
不用意に方向転換したり、走ったり、ジグザグ歩いたり出来ない。
だって君たち、困るだろう?

試しに国の外へ出てみたら、国はずっと夜のままになった。
旅立つことすらままならない。
「うしろむきにあるいたら?」
牧場の女の子が言った。
試したら僕の進行方向とは逆、つまり見えてる方向が夜に変わっていった。
体の向きは関係ないみたい。
しかたなく僕はずっと歩く。
一定のペースで歩く。
休憩くらいは取るけど、日がな一日歩いてる。
一日って、夜が来るまでって考えたらどんどん時計と違うことになるから、
この国の人は夜や朝じゃなくて時計を見て寝起きする。
僕も時計を持ってる。
王様がくれた、小さい丈夫な時計。
時計の針が一回りしたら僕は眠る。
その辺で寝たり、その辺の人に泊めてもらう。
幸い、この国の人は僕を縁起物扱いしてるから誰も嫌がらない。
僕が泊まると「楽しい良い夢が見れる」んだって。
僕は悪い夢なんて見たことがない。

その日は葬列に出会った。
みんな泣いている。
お葬式なのに僕が来たら、暗くて邪魔になるかなと思って
ゆっくり進む葬列の後ろを、ゆっくりと歩いた。
今日僕の後ろはちょっと夜が長くなりそう。
列が散った後、葬列の前の方に居た人が僕に声をかけた。
「ゆっくり歩いてくれてありがとう。よかったら家で休んでいってくれ」

目が覚めて、また歩くために家の主に挨拶しようとしたら礼を言われた。
泣いて赤くなった目で、でも笑顔でこう言った。
「夢であの人に会えたよ。笑っていた。僕が爺さんになるまで待ってるよと笑ってくれた」
ありがとう、と僕の手を握った。
僕も「泊めてくれてありがとう、またね」と言って
歩き出した。

面倒臭いものに生まれてしまったな、といつも思うけれど
これが僕なので、仕方が無い。
いつか僕も死ぬだろう。
人どころか生き物ですらないかも知れないからわからないけど、多分。
その時はこの国も昔みたいに自然に朝が来て夜が来るようになるだろう。
「僕は一体何なんだろうなあ」なんて
考えるのもやめた。
だってそんなのは学者にだってわからない。
僕は生まれたのだから、きっといつか死ぬ。
生まれたことを知ったときから、それは何となく頭のどこかにある。
それまで僕はただ夜を連れて歩くだけだけど、
きっと君が思うよりも、悪い生き方じゃない。


いつか出会ったら泊めてくれると嬉しい。
星の綺麗な夜を連れて行くよ。


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