2017-08

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チョコレイト リリィ

ねえ、何でそんなにのんきな顔をして笑っているの。
空はこんなに黒くて赤いのに。
しかも君の目の前にいる僕の背中にはコウモリみたいな黒い羽が生えてるよ。
そうだよ、見たまんまの悪魔だよ。
世界はもうすぐ終わってしまう。

僕は今、多分いつもより怖い顔をしていると思う。
彼女はベッドに腰掛けて足をぶらぶらさせていた。
本当に全くのんきなものだと思う。
「ねえ、そんな所に立ってないで座ったら」
カーテンの隙間から外の様子を伺っていた僕に、そんなことを言う。
飽きれてつい、また同じ質問を繰り返してしまう。
「何度も聞くけれど、何でそんなにのんきなの?」
空の色を見てご覧よ、外の音を聞いてご覧よ。
昼間だというのにこんなに暗くて静かだ。
「何度だって答えてあげるわ。私が一番怖いのはあなたにさよならを言われる事だけ」
堂々巡りする。
何故って僕は彼女のこれが理解出来ないからだ。
「死ぬより怖い事なんてあるのかい?ましてや君は、か弱い生き物だ」
「ええ、あなたがわかるまでは何度だって繰り返してあげる。私が怖いのはあなたが私に興味を無くしてしまうことだけ」
そうしてまた彼女はにこにこと足をぶらぶらさせる。
「悪魔だよ」
「私はあなたが大好きよ」
そうしてまた僕は混乱する。
彼女を見つめながらまた堂々巡りの会話を反芻する。
意味がわからないよ、だって世界は終わりかけていて君の目の前に居るのは悪魔なのに。
何で怖がらないの。
世界が終わっても僕は生き残って、彼女は多分死んでしまう。
死んでしまうはずの彼女はのんきで、多分確実に生き残る僕はとても焦っている。
「このままだと君は死んでしまうよ」
「死んだらあなたは私を忘れてしまうの?」
僕らは他の生き物よりずっと丈夫で長生きで、記憶の量も半端じゃないけど
どれもこれも時間と共に埋没してしまうことなんかない。
全て覚えているし、すぐに思い出せる。
忘れるもんか。
初めてだ、こんなに混乱させられたのは。
いつだって僕らの方が混乱させる側だったのに。
こんなのは初めて。
「忘れられるものなら忘れたいね、きっと無理だけど」
ああほら、まただ、その笑顔。

何だろう、僕はとても損をしている様な気がする。
時間の流れがとても早く感じる。
終わってしまう、もうすぐ終わってしまう。
僕はとても怖い。
だけど彼女は笑顔で見つめ返してくる。
ねえ、何でそんなにのんきなの。
空はもう真っ黒だよ。
「君はとても残酷だね」
そう思ったから口に出した。
世界はもうすぐ終わってしまうのに。
「悪魔みたいに残酷だ」


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