2017-07

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死神



僕はいつだって君たちと共に死にたかった。


僕はもう、かれこれ何年生きているだろうね。
少なくともこの街の人々の人数よりも多く、もしかしたらこの街の人々の指の総数よりも多い。
終わりが無いと悟ったときから、僕は数えるのをやめてしまったよ。
けれどちゃんと数えておけば良かったな。
君が吃驚した後に笑う時の顔や声がどうにも好きなのだ。
ちゃんと数を覚えていたらきっと、それが見れたのに。

「ねえ、おはなしして」
君は眠る前に必ずそうやってねだるけれど、僕はたくさん物語を知っているから困ることはない。
きっとこの国の人々の足の本数よりたくさん知っているよ。
「じゃあ、きのこの精の話をしよう」
「きのこの精?」
くすくすと布団に隠れた口元が笑う。
「きのこの精はね、とってもかわいいやつととっても怖いやつがいるんだ」
「この街にもいるかしら?」
「公園の林の中にならたまにいるんじゃないかな。雨の次の朝が出会いやすい」

そうして次の雨の日のその次の朝を楽しみに眠った君の前髪にキスをする。

僕はきっと何をどうやっても永遠に死ねないのだけど、飽きることなんてなかった。
大好きな何かに出会っても、ずっと手を離さないでいられたことなんて1度もなくて
僕以外の全てに平等にやってくる終わりというものに、
ひどく腹を立てて癇癪を起こしたりしてた頃もあったけれど、
しばらくしたらまた僕は懲りずに何かを好きになってしまうのだ。
愛おしい日々はいつだってあっと言う間だった。

丘の教会のシスターだったターシャ
郵便配達のサント
古道具店の六太じいさん
南の国で隣人だったイアン
黒い森で出会ったサラ
はぐれ牧羊犬のヘンリー
科学捜査官のワット
それから
リリィ、金田、ピアズ、トリコラ、加奈子、ハル、ホクナ、
ネネ、マロウ、シャオ、タチアナ、リッキー、メク、トトキア、コリンズ兄弟、
トリー先生、ネロ、ロビン、
ずっと一緒に居られたら良かったのに
僕の大好きな人達はやっぱり神様も好きみたいで、いつもすぐに呼ばれてしまう。
まだ話していない物語が沢山あったのに。
聞いていない物語も。

きっと
とても早く過ぎ去ってしまうことだろう。
私にとって、特に君は。

出来るだけ長く一緒に居たいばかりに、僕はいつだって彼らの終わりを引き延ばした。
気付かれないようにそっと、あちこちにぽっかりと空いた穴から彼らを遠ざけて来た。
それでもやっぱり終わりが来るのだ。


僕は死なないけれど、沢山の死を知っているよ。
きっと僕の年齢よりも沢山知っているよ。


「あたしも死なないで、あなたとずっと一緒にいるにはどうしたらいいかしら」
眠る前の彼女の前髪を撫でる。
この子のおでこの形、小さい頃から変わらず丸くて好きなんだ。
「あなたはなぜ死なないの?」
いつもの様に額にキスをする。
「神様に嫌われてるんだ」
すっかり大人になったのに、君は全然変わらない。
「ならあたしも神様に嫌われなくちゃ」
布団で口元を隠してクスクス笑う。
ああ、何て愛しいのだろう。

「残念ながら、僕と神様は好みのタイプが同じなんだ」

君と死にたい。


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