2017-06

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しっぽのふたりと雪の町

さあつぎはどこへいこう。

しっぽをゆらゆらふたり旅。
ほそい吊り橋をぶらぶら渡って、見えてきたのはたくさんの煙突から立ち上る幾筋もの白い煙。
「今日の宿はあそこかな」と茶色の耳としっぽの方が言い、
「そうさね、丁度日も傾いてきた」と白い耳としっぽの方が言った。
ああ寒い寒い。
宿はだいたいどの町も中心街のちょっと手前にある。
町へ入って中心へ向かうと人が少し増えてきてほんのりあたたかくなってくる。
「ああ、あったね」
「ここでいいね、部屋はあるかな」
「あるさ」
カロンカロンとベルを鳴らしながらドアをくぐると、あったかい空気につつまれた。
たまりませんなあ。
「おや、めずらしい、旅の方ですか」
「ええ、ご主人。寝床のふたつある部屋は空いていますか」
「かしこまりました。今日はとくに冷えますから中の方の部屋をご用意いたしましょうね」
ありがたやありがたや。
上の階へあがってもあたたかい。
ここはどうやらとても良い宿だ。
「毛布が足りなかったら言ってくださいね」
「ありがとうご主人」
「ありがとう」

「さあ、荷を解いて食事に向かおうか」
「その前に路銀を確保しよう」
「ああ、それなら一番かさばるあれを売っちまおう」
ふたつの鞄から取り出したのは、綿の谷で集めた綿鶏の羽をどっさりつめた袋がそれぞれひとつずつ。
この雪の国ならきっと良い値段で売れるだろう。
「少し残すかい?」
「そうさね、少し取っておいて羽飾りやペンを作ってまた売ろうか」
「それも好いね」


「それならきっと寝床職人のところが欲しがりますよ」
再び上着と帽子を着込んで宿のご主人から聞いた店へ。
カロンカロン。
「こいつは良いね、何より軽い」と、寝床職人の親方。
「良いだろう?しかも鞄の底に詰めてたってのにこんなにふんわりだ」
綿鶏の羽はふんわりしているが、とても丈夫な良い羽だ。
「もっと取って来れないのかい?」
「おれたち旅の途中なんだ。もし良ければルートに加えてくれそうなハンターか商人に話をつけるよ」
「きみたちの儲け話にならないじゃないか」
「すてきなものを見つけて好きに楽しむのが仕事なのさ」
「銀貨はあんまりたくさん持つと重いからなあ」
寝床職人の親方はひとしきり大笑いすると
「食事に行くなら隣の通りの食堂へ行きな。俺のツケで食わしてやるよ」
さあ、これが羽2袋分の代金だ、と言って丈夫な布の袋にたっぷり入った銀貨を渡し
「これ以上銀貨を入れると重いからな、紹介のお礼はこれでどうだい」
と言って、軽くて暖かい上等な外套をふたりにそれぞれ被せてやった。
茶色の耳の方には緑のを、白い耳の方には青いのを。
それはふたりにとてもよく似合った。

「良いものを貰ったな」
「ああ、こいつはとても良い」
「何より軽い」
「これなら旅の邪魔にならない」
しっぽをごきげんにゆらしながら隣の通りの食堂へ。
カロンカロン。
「やあ、とても繁盛しているな」
「期待出来そうだな」
所狭しと並べられたテーブルと椅子、それに座った人々をよけて
奥の小さな席に空きを見つけた。
「おや、旅の人たちかい」
「こんな雪の深い町まで来るのは珍しいねえ」
と、隣の席の旦那方。
「旦那たちはここらの人かい」
「そうさ、一仕事終えてあったまりに来たんだ」
「鶏肉のミルク煮込みと野菜のスープがうまいぞ。おおい奥さん、注文だ!」
「あとパンが欲しいな」
「芋のパンがあまくてうまいぞ」
「ならそれだ」
ふたり分の料理を頼んで、食堂の奥さんが注文伺いと同時に運んできてくれたあたたかい茶で一息ついた。
「なあ、旦那方、このあたりに商人かハンターは来てないかな」
「ん?そんならそっちの席の兄さんたちがハンターと商人のコンビだ」
「呼んだかい?」と、逆側の隣席から声がかかる。
話の早い町だなあ、と白い方がしみじみするのをよそに茶色の方がにこにこと話し始めた。
「兄さんたち、綿の谷は知ってるかい」
「綿の谷?ここより遥か南の方にいくつかあるって聞いたことはあるが」
「いや、この近くのだ」
「この近く?」
「うん、おれたち数日前に見つけて寄ったんだがね」
しっぽのふたりとハンターの兄さんと商人の兄さんと旦那さんたちは運ばれて来た料理を楽しみながら
そこそこに夜が更けるまでわいわい話した。


「ああ、あったまった」
「ああ、腹いっぱいだ」
しあわせだ。
宿の部屋で毛布にくるまって、しっぽのふたりは寝床に転がる。
「話がついて良かったな」
「ああ、彼らが丁度ここいらで新しいラインを検討しているところだったのは驚いたけど」
「これで一件落着だ」
「ああ、すっきりだ」
さあ、次はどこへ向かおうか。
「やっぱり、さっき聞いた東のあれかな」
「だな」
「うん星の」
「星の大高原」
「また“うわさ”って程度の情報だけど」
「でもきっとあるな」
「あるだろな」
「どんな感じかな」
「星がよく見えるとか?」
「それも良いけど、星がいっぱい落ちてたらおもしろそうだな」
「それ良いなあ」

しっぽのふたりは嘘みたいなうわさや架空の物語を追って旅をする。
「みんなが知ってるけれど誰も見たことがないものを見つけるにはこれがいちばん」
「けっこう実在してるしね」
「意外な真相もあったりしてね」
「そうそう」


「すてきなものを見つけて好きに楽しむのが仕事だからね」
「雲をがっしり掴むみたいな夢のような仕事さね」


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