2017-06

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ホワイト

ぐにゃぐにゃに曲げられて、たわんでしまった金網に体を預けてそのまま座り込んだ。
絶妙にフィットして居心地が良い。
眠ってしまおうか。
ミルクティーの缶はまだ熱くて、冷えきった手の平をやけどしそうで
無理矢理伸ばしたセーターの袖越しに暖を取る。
こうして缶の熱が手に馴染んだ頃にはもうぬるくなってしまっているのだ。
熱い内に飲んで体内から暖めてしまった方が効率が良いのはわかっているけど
いつもこうして長い間缶を抱いてしまう。
背中から風が吹き抜ける。
寒い。
だけどこの地面の固さや、息の白さや、裸の枝の薄情な感じがとても好きで
ついこうやって全身が凍え切るまで居座ってしまう。
「何やってるんだ、とっとと帰るぞ」
いつもと同じタイミングの背後からの声に振り向いた。
いつもと同じように白髪の若い男が立っている。
白髪と若い顔が見事にミスマッチ。
服装もミスマッチ...モッズコートに下駄は無いだろ。
「じいさん、今日の飯は何だ」
「誰がじいさんだ」
「続柄は実の祖父なんだから良いだろ」
「よせ、老けるから」
老けてみせろってんだ。
「で、飯は」
「シチューが良いな」
「希望かよ」
「今日は作る気がしない、お前作れ」
皺ひとつ無い顔で年寄りくさい笑み。
「じーちゃん、その内おれ、じーちゃんより老けるのかな」
「血筋かも知れんぞ」
「本当に?」
「ほらおれと同じ年頃の親戚、行方不明が多いだろう。どっかでおれみたいに年も食わずに生きとる可能性の方が高いかも知れん」
「つっても戦時のことだろ?」
「おれはこの通りだ。生き証人ってやつ」
ほら帰るぞ、立て。
差し出された手を掴んだら、立たされたついでに持っていたミルクティーを奪われた。
「ぬるい」
「買い物して帰ろう」
奪われると同時に奪った煙草を吸いながら材料を考える。
じゃがいもにんじんたまねぎ鶏肉。
「クリームシチュー」
「そう、クリームシチュー」
煙を吐いたら白い息と混じって濃く広がった。

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